橋下徹知事が就任する以前から、大阪府政に優先順位をつけるとすれば、最優先は財政再建だったが、これまでの知事が誰も手を付けられなかったと考えればこれは評価に値する。
また、政府に対しての働きかけなど、フットワークが非常に軽いのも、これまでの知事とは違う。例えば、以前から問題となっていた国直轄事業負担金を声高に問題視したのも橋下知事が初めてだった。大戸川ダムの問題でも、滋賀や京都の知事らと協力して反対意見を出すなど、これまでにないスピーディーな面を印象づけた。
ただ、買い取りが決まった大阪ワールドトレードセンタービルディング(WTC)の問題については違和感がある。府が庁舎移転よりも先にやるべきことは大阪市との二重行政の整理。そのうえで、府庁舎の規模を論じるべきだった。
WTCのある南港・咲洲地区のまちづくりも、特区制度を設けて企業誘致し、経済をかさ上げしようという知事の構想は時代錯誤。財政赤字をふくらませる危うさを感じる。地方分権の時代に自立するためには、無駄を省きコンパクトな都市にすることが先決だ。
むしろ、長期的に予算をかけるべきなのは教育分野。経済的に困窮している小中学生の家庭に行われている就学援助の支給対象者は全国ワーストだ。教師の数を増やし、就学援助世帯と、そうではない世帯の学力格差をなくさねばならない。
また、大阪(伊丹)空港の廃止もおかしい。知事が意欲をみせる関西州が実現したとき、伊丹は中心地にもなる。小型機専用の空港として活用していくべきだ。また、関西空港を貨物空港に特化し、対岸のりんくうタウンを港湾整備して、ハイパー中枢港湾にする方が経済効果を呼び込める。
一方、ことあるごとに、「知事は選挙で選ばれた政治家で、ビジョンを示せば良い」という。だが、自治体の長は本来は実務家であるべきだ。確かに、おおまかなビジョンを提示することは必要だが、どうやってそこに近づけるかは実務にかかっている。地道な会議や調整、話し合いが不可欠であり、他府県との連携でもそれは同じ。聞こえのいいパフォーマンスだけで自治体経営はできない。
知事に今後求めるのは、府職員をいかに動かすか。高い支持率にあぐらをかかず、職員からのさまざまな意見を聞き入れる。職員の力をいかすことができなければトップの資格はない。
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